[不意に、身体が軽くなった気がした。倦怠感も眠気も一気に醒めて、思考がとても鮮明になる。朱に染まる指先を持ち上げた。これまでのように、むしゃぶりつきたくなるような欲求は不思議と湧き上がらなかった。] ――…王子の味、か。[それでもちろり、中指に付着する鮮血を舐めてみる。"悪くはない"人間の血の味だった。不意、真横で倒れ込んだままの不完全な物体を見遣る。半身からくゆる蒸気の量が、増えてゆき、やがて――完全な肉体を取り戻した。] 生きたいと、願うのか… お前も。