[両腕は意味を成さなかった。
伸ばした両腕は彼を抱き寄せることは無く
空を切り、逃げられた。
ならばその両腕は前足となる。
四つ這いの姿勢となり、全身を蔦に覆われ
触手か繊毛めいて蠢く毛並みとなった
緑の狼へと転じていく。
その大きさはかつての娘よりも
一回りほどは大きい。
かつての娘の名残は、その頭部だけに残る
金の毛並みだけ]
グルァアアアァアア!!!!
[咆哮し、相手に飛びかかる。
鋭い爪は相手の胴を狙い引き倒そうとし、
凶々しい牙は相手の急所をしつこく狙う。
喉さえ潰せば声は出せまい。
誰かに助けを求められまい。
そうして大人しく餌になれば良いのに]