― 回想 ―
[生家に居た頃。
貴族の長子ではあっても騎竜師としての才を持たぬ娘と、積極的に関わろうとする者は少なかった。
だから。
たまに顔を出す、年上の又従姉の存在は、自分にとって大きかった。
一緒に遊んでくれる、笑いかけてくれる。
その人にとっては些細な事だったかもしれないが、自分にはそうではなかったから。
「ユーディットさま。また、きてね」
見送りの際、いつもそう言って姿が見えなくなるまで手を振っていた。
最も、彼女の母様が亡くなられたと聞いてからは一度も会えなかったけれど。
彼女にももう、昔の様には会えはしないだろう]