[僕は空いているベンチに適当に腰を下ろして、手持ちのリュートを膝の上に乗せる。
これは僕がいつも持ち歩いている愛器だ。
古代の楽器のレプリカで、今や素材はまったく異なるけれども、それなりに近い音は鳴る。ドロイドや体感ホログラムの演奏に飽きた頃合いに、レトロな曲を挟むと聴衆にはそれなりに受けた]
…まぁ、舞台でなくても弾くんだけど。
[舞台の予定以外は好きな時に好きな場所で、好きな曲を奏でた。
今、ここに聴衆がいてもいなくても。まずは気分がのるままに、弦を一つ、爪弾く]
この光景も、そろそろ見納めかな。
[もうすぐ、ギムレー星系に差し掛かる頃だという。
あと何回ここに来れるかな。今回の旅も、歌にすることはなさそうだけれども。
木々の緑や草花の美しさは、まぎれもなく本物で。
少なからず心を打たれた僕は、それらに感謝の気持ちを込めて、今日も、───歌う。**]