火でも、毒でも、俺は止められないぞ、「慣れて」いるからな。
[ 二十数年、誰より熱い炎と競い合い、身内の送り込む毒を躱してきたのだから、と。そんな呟きは、敵将に届きはしないだろうが ]
[ ふと、思い立って、男は懐深く隠すように持つ黒曜石の笛を引き出した。
男が奏でられる曲は一つきり、ゼファーでも祭りの折には演奏される戦神を讃える歌の一節だけだ。
以前の宴の折にも、その曲だけは披露されたから、もしかすると王弟も覚えているかもしれない。 ]
ふ...
[ 覚えていたからといって、何がどうなるわけでもない。
けれど、何故か、そうしたいと、求める心のまま、男は黒く光る石笛を炎の只中で吹き鳴らし、やがて海へと身を投じた** ]