その言い分で行くと、アウトプットは琉璃が受け持つことになるぞ。
ただのレポートなら未だしも、観光の感想だ。
俺にとっては鬼門から入って裏鬼門に抜けるようなものだ。
[実験レポートならまだ書ける。
だが、如何にも主観は難儀に過ぎるのだ。
文系科目では常に妹に一歩及ばないのがその証拠。]
―――…天龍寺へは、また二人で来よう。
今度は笑う余地すら与えない名実共に、だ。
[未来の約束をさり気なく絡めて、また距離を詰める。
身体だけでなく、心も寄せて、常とは変わった時間を過ごす。
大きく息を吸い込むと、まだ緑の多い木々の中に、ちらほらと紅の色が差し始めていた。>>305]
どっちも琉璃の色だな。
[夏の翠は彼女の瞳に似ているし、秋の茜は彼女の髪に似ている。
人は少なくないが、静謐な空気は嫌いでない。
傍らに妹が居るなら、他に云うこともない。]