[そうして見て回っていると、ふと、ある店の前で足が止まる。
『花屋Florence』――たくさんの淡い花が並ぶ店内にはどうやらドロイドしかいないようであった。(そのドロイドがイケメンかどうか、それは女にはよくわからなかった)
ここの店主は女よりも少し年上の女性である。
だが女がこの船に乗った時にはすでに彼女は船にいた。
自身と歳が近い人で、自身よりも長く船に乗っている人というのは、女にはあまり思い当たらない。
それもあったし、船に乗った当初は歳の近い子供は珍しかったこともあって、なんとなく、目で追うことも多かった。
どうしてあの歳で船に乗っていたのだろうと思うこともあった。
それに彼女は船から降りてどこかへ行くこともなかったから。
親近感、と呼んでいいものか――それはもっと昏い、仲間意識のようなものかもしれない――そんなものを、淡く抱いていたこともあった。
だが彼女が軍の所属と聞けば、苦手意識が湧いた。
彼女は恐らくちゃんとした経緯で就職をして、きっと厚遇を受けているのだろうと、そう思った。
住む世界の違う人。勝手にそう決めつけた。
彼女の仕事と身分証の不釣り合いや
彼女には帰る場所がないこと、この船から行くことを許されていないこと
生きているのがいやと言っていたことも
何もかも知ることはない。
それでも淡い“仲間意識”は、心の中にそっとあるまま
世間話ぐらいは、することがあったかもしれない。]