[ぎり。と、奥歯が噛み締められた。
呻くような声が喉の奥から絞り出される。
叶うことなら、今からでも王宮に取って返したい思いがある。
王宮に引き返し、主たるクレイグを救いに駆けつけたい思いが。
…だが。男はそのクレイグ自身に、彼の息子たるダンクラードを護れと命じられている。その務めを、男は投げ出すわけにはいかなかった。
この少年を無事に逃がしきるまで、戻るわけにはいかなかった。
もしもこの、ターリスが味方してくれていたならば。
彼までもがノイアーの手に落ちていなければと、思う悔しさが、彼の言葉に隠せず滲む。]