[彼女の言葉に、テオドールは何も答えなかった。ちゃんと聞いていたのかも怪しい。ただ黙っていると、上のボタンが外されて、首筋から肩にかけて、その周辺が見えるようになる>>260。]―――――。[薄暗がりの中で見えた傷跡に、僅かに目を見開いた。ほんの少しだけ。父や母の愛を、さらには兄姉の愛を惜しみなく受けたテオドールとしては、この場の誰よりも共感しづらい光景だっただろう。実際、傷の痛みも心の痛みも。テオドールには感じ取ってやることも汲み取ってやることも出来なかった。]