―― 医務室前 ――
[少し前のこと。
暫く待っていると、出てくる女性とすれ違った。>>290
先程室内から聞こえてきた声の張りや>>275、その足取りを見れば、先程覗いたときより加減は良いようだ。
どうやら、ここの医者は、患者を作る方ではない様子。
すれ違う彼女がこちらを見遣り、不安そうにしていることに気づけば、素知らぬ顔で目を逸らす。
そのまま医務室へと向かったので、不自然には見えなかっただろう。
お大事に、の一言は、互いの顔が見えなくなったあとの、口の形だけにとどめておく。
このようなときの常套句であろう――そして、先ほどダーフィトからも受けたその挨拶>>239、『良い旅を』は、
この青年が容易く口に出す言葉では、なかったので。]*