[握りしめた手を、
ロウが柔らの手だと思ってくれているとは、
気づけないままだったけれど。
“わたし”の目に映る、
華奢な両手は――…真っ赤な血に濡れている。
この手で殺した兄と、私の犠牲にした奴隷の。
愛していたのに、殺された。
愛していたからこそ、この手で殺したいと願った。
理由が何になる?
どんなに守りたいと願っても、死によってしか守れなかったのに。
私の手は、もう人殺しの手なのに。
拭っても拭い去れない赤い血の名残香と、
焼けつくような罪悪と喪失の激しい痛みは、
きっと一生、消えることなどない。]