― 回想・15年前、州都 ―
[暗闇の中を、少年を庇いながら街路を抜ける。
じきに街を抜ける。声を掛けられたのは、そんな場所だ。
足を止めた男の身体に緊張が走ったのを、少年も恐らくは気づいただろう。
フードから続くマントの下、腰に帯びた剣の柄に手が掛かる。
男はそれを抜かぬまま、相手の名を呼んだ。]
ターリス・ガーウィン。
… 夜遊びの道にでも迷ったか?
[名を呼ぶ声に返す声は、つとめて軽い。
闇は深く相手の表情は未だ見通せぬ。
信に篤く、武には長けた男だ。
この場で打ち合えば厄介だなと、そんな思いが脳裏を掠めた。]