[ペーターの部屋に飾られている絵>>134は、12年前の誕生日に母親からプレゼントされた水彩絵の具を使った一輪の薔薇だ。
何枚も習作を描き、苦労して仕上げたあと、これぞ会心の作と知り合いに見せに回った。
その結果、”年上のおにーさん”であるペーターに譲ることになったのである。]
確かローゼンハイムさんに頼み込んで、屋敷にある自慢の薔薇、一番美しく咲き誇っていた花を描かせてもらったっけ。
[当時ローゼンハイムはまだ心を閉ざしていなかったから、快く許可してくれた。
そのときの笑顔と現在の姿を比べると、さすがに胸が痛くなる。…しかしまだ人生経験が浅いし、どんな言葉をかけていいのか、さっぱり分からない。
父親を亡くしたとき、自分はまだ三歳。
泣いた記憶はぼんやり残っていても、胸の痛みは色褪せてしまっているから。]