―回想:レストランでのアデルとの話―
難病患者……向け?
あら、そうなの?植物はいいわよね。
まぁ、そんな植物もあるの?
うわぁ、見てみたいわ。
[名を名乗ってくれたなら、それを数度繰り返して、短い船旅の間だけど、改めてよろしくと伝える。
そして、彼の話に相槌を打ちつつ、にっこりと笑う。
難病患者……という部分で不自然になったことに気付かれていなければいいが。
自分のは病気ではないし、そもそも軍の監視が付いている時点で治療なんて頼めるはずもない。
治療法があるのであれば、とっくに試しているわけだし。
そんな思いは、続く植物の話で吹き飛んだ。
聞いているのも話すのもたのしくて、ついつい興味津々に身を乗り出してしまっていたかもしれない。]
ええ、待ってるわ。
栽培施設もあるから、アドバイスなんかもらえると嬉しい。
[あとで店に寄らせてもらうと聞けば、そう答える。
切ってしまった花のように、咲いてしまった花のように、彼にそれほど多くの時間が残されていなかったのだとしても。>>241
彼が席を立つならば、話の余韻に浸りつつ、その背を見送っただろう。*]