[願いながらも、“また”大切な人を失うかもしれない恐怖に、
胸の奥の深いところが鋭い爪で抉られたように痛んで、
微かに指先が震える。
兄のように、ロウを失いたくなかった。
疑いよりも、その恐怖の方が勝ってしまった。
それが自分の弱さからくる、愚かしさだと分かってはいても。
たとえそれで、また命をおとすかもしれなくとも。
“わたし”へのローの抱える相反する二つ心>>1:79や、
震えるほどの血色の興奮>>1:279には、気づける由もないまま。
誰よりも疑いたくない人への、
胸の奥を過った微かな疑念>>1:201や不安>>1:195は、
いつか開かなくてはならないかもしれずとも、
今は――…心の奥底の箱に閉じ込める。]