[ 目に入ったのは、膝を抱えたままの男>>285。
乗客データに記載されていた名を思い出す。
……確かノーラだったか。金馬号の料理人。
膝を抱えているのを見れば一歩前へと踏み出すが。
足元の怪我が、血が、目に入る。]
……大丈夫? 立てるかい?
怪我が酷いなら医務室に……。
とりあえず、これを。
[ ハンカチを取り出し止血をと差し出すが、
実際は僕の腕の方が震えていた。
──血の甘美な香りに、過去を思い出す。
ガルーの遺伝子が暴発し、友を死なせた時のこと。
男は死んでいない。むしろ血を流しているだけなのに
何故こんなに身体が熱いのか?
──それは 身体が から
傷口を見ないよう、目を反らしながら渡そうとする姿は
客観的、不審な行動に見えたことだろう。]