[身体を拭き着替えを済ますとニコラスの本を読もうとした。
ベッドに転がりながら『ジュブナイル考察』と表紙に書かれた本の頁を捲る。中身は民話や伝記が書かれていた。途中途中飛ばしつつも最後まで読もうとして……、途中でめげた。
全く頭に入って来なくなった文字の羅列を眺めて、うーんと唸る。
子供の頃から本は余り好きではなかった。どちらかと言えば木登りや追いかけっこ等、体を使って遊んでいた。
木登りになると誰が早く登れるか競争した。オットーよりも早く登ろうとして、先に天辺に登れた時はどうだと言わんばかりの満足げな笑顔を見せて。負けそうになった場合はオットーに負けるのはどうしても嫌だったから途中でやーめたと投げ出した。他の子供に狡いと言われたのを覚えている。多分、オットーにも。ごめんと中々言えなかったがオットーは許してくれたんだっけ。
雪合戦の時もオットーの頭に向けて雪玉を投げていたが、そちらの方はどうだっただろう。
…大分、昔の事だ。一緒に遊んでいた子供達の中にはヨアヒムも居た筈だったが、アルビンは思い出そうとしたが逆に遠のくようだった。]