― 現在:天獄の泉 ―
[意識を失っている最中、目の前の汚らわしい存在にどこもかしこも見られ、触られていたという事実>>258は、潔癖症であり精神的に追い詰められているアイリを恐慌状態へ陥らせた。]
知らない!わたしが願ったわけではない!
っ、い、やああーーーー!!!
[やめろ、殺せ、触るな、離れろ、けがらわしい。
これら五つの単語と金切り声を交互に、繰り返す発し続ける。
みしり、の次に、みちり、と。皮膚が裂ける音がした。
翼の根元から血が溢れ、背筋を、羽を汚す。
あともう少し力を入れるだけで、引きちぎれてしまうだろう。
そんなになっても、たすけて、とは一度も口にしなかった。
それは守るべき最後の矜持であった。]