旅人 ニコラス

[普段よりも更に柔らかい、まるで幼子に言い聞かせるような口調で呼び掛ける。]

何故ってね。こんなときに言い出すのは反則かなって少しためらったけど、黙っている理由もなくなっちゃったから宣言するよ。

僕がゲルトの予言にあった、狼占の眼だ。
昨日注目されていた――人狼の決定的証拠がもしも見つからなかったら、次に投票があつまる可能性が最も高い人物。シモンさんを占ったんだよ。

でも、結果は皆が知る通りシモンさんは人間だった。だから僕は沈黙を貫こうとした。
でもリーザが人狼だって言うなら、もう隠れている必要はないだろ。

[誰にも言うつもりはないけど、出てきた本当の理由。
それはカタリナから守護の手の護衛を引き離すこと、だ。

大切な存在の死を看取るだけでなく、相手が人狼だと分かってしまう羊飼いを想像するのが嫌だったからだ。
カタリナがどう思っているかは、今尋ねる余裕なんてないので知らないし、推測するのも難しい。ただ自分が嫌だ、そのエゴを優先したのだ。*]