[無垢を抱いた腕から伝わるのは、確かな忌避だった。>>271
彼の持つ穢れ無き魂と翼は、神が寵愛したもの。
白き光と空の蒼、彼は天上の玲瓏を編んで出来ていた。
主神を賛美し謳った唇が、今は朝露以外に濡れている。
蜜を舐めた訳でもないのに、とろりと艶を持ち、拒絶を口にするたび覗く舌にも蠱惑が乗り。それでいて、穢れを察して戦慄いている。
万里を見通す眼を持つ魔物は、審美眼にも長けていた。
黄金比を計って成形されたこの天使は、姿かたちだけでなくその魂も美しく高潔な比率を有す。>>272]
勇敢だね。
恐れても構わないのだよ、私の興が削げるだけだ。
[真実など何処にもない口振りで、彼の啖呵に笑うは悪質な揶揄。
この程度で折れる偽りの輝きではないと知るが故、貴婦人をダンスに誘う素振りで彼の背を支え直した。]