[やがて前方に赤き茨に覆われた魔城がその姿を現せば、絡みつく蔓と鮮やかに咲く深紅に、表情を引き締めて仰ぎ見る。]
(ジーク兄…、嘘だよね…――?)
[魔と通じた咎で教会から去った、兄のような姿を思い出せば、見上げた瞳から溢れてはいけないものが頬を伝いそうで、ぎゅと目を閉じた。]
(僕は信じない…――きっと、きっと…)
[きっと、彼は悪魔に騙されただけだ。
教会の誰も信じてはくれなかったけど、きっとそうに違いないと今でも信じている。
そうでなければ、あんなに優しかった彼が自分を置いて行くなんて信じられなかったから――。]