― 回想 ―フレデリカ・ファロン?[それは公国に戻って、どれほど後のことだったろう。耳にした懐かしい名前に、ディークは目を丸くしていた。知らない名前ではない。むしろ馴染みのある名前だ。無論、出自が公国《ここ》であれば、名が聞こえたのも不思議じゃないが、]あいつ、まだ……。[まだ学生だろう。とは、音に出来なかった。自分が学校に居た頃とは情勢は変わり、緊迫は高まりつつある。だからかと最初は思った。が、続けて彼女の家が取り潰されたことを知った]