[>>254 暫しの沈黙ののち、彼女は自分が背信した理由を語る。]
確かに―――……
シコンは時に、花の要塞と呼ばれることもあります。
それだけ防戦に適した立地であり、……花に恵まれた美しい町と云われています。
――……青いチコリの華が街一面に咲き乱れる姿は、綺麗だったな。
[仕事の都合上、度々シコンに行くこともあったけれども。
花の季節は、それはそれは美しい街並みであったと記憶している。
ウェルシュは懐かしむように目を細め、その青い花々を思い出した。]
だからこそ、シコンには軍港という番犬が置かれ。
そして狙われた…… そうなのだと思います。
―――その番犬が、本来の役目を果たしてくれたならば、
戦況はウルケル側が有利だったと思うのですが。
[穏やかな口調を努めたつもりだが、どうしても棘が混じってしまう。
そんなこと、アンディーヴは耳に痛いのは承知の上だけれども。
どうしても、恨み言を言ってしまうのだった。]