― 城の一室 ―[意思持つ霧は廊下をひたひたと漂い満たす。先ほど感じた異変の気配>>220 に近づいて、扉の隙間より滑りこんだ。霧の流れは細く細く伸びゆき、銀色の小さな蛇へ姿を変える。見えぬ蔦に絡め取られた青銀と、可憐にさえずる金糸雀とを見上げ、ティーテーブルの上に這い登る。細い身体をくるりと丸めれば、一個の装飾品のようにもなった。瞬かぬ金の眼がふたりを見つめ、赤い舌がちろとひらめく。]