[触れえるなら、その、ナイフを持つ“手”に。
さっきは逆だったかな、壁を殴りつけた手に、触れてくれたのだけれど。>>256
昔は自分の方が年下で、あのころから大きくはなかった彼女と比べても、自分だって小さくかった。
けれど、いまは、
この手の方が、きっと、大きいだろうから、触れえるなら、包むように。
その手のことを、知らずにいる。
けれど、もし――…
知る由もなくとも、知っていたとするならば、
それでも、自分は、絶対に、
必ず。
――… うん、もしかしたら、温度の欠片もなくて冷たい掌は、
今の身体の状態を伝えてしまうものに、なるかもしれないのだけれど。
そうして、にいっと、いつもの顔で笑うのだ。]