― 14年前:辺境伯の館―[普段はわんぱくかつ粗野で通っているツェーザルも、流石に一人で辺境伯の館を訪ねた時は、借りてきた猫みたいに大人しく、緊張していた。親父が亡くなり、ガーウェンの家督を継いだ齢12のツェーザルは、これから自分が仕える主君に挨拶をしたいと――辺境伯の館の門を叩いた。「一緒にいこうか?」という親戚からの申し出は断った。この身ひとつで、信を預けることになる相手を感じ取りたいと欲したからだ。]