――こっち。
[目的地に着いた事で心が浮き立つのを感じながら、進路をやや左手に取って本瓦葺きの本堂へと向かう。
この本堂は度重なる災いから逃れた数少ない天平期のもので、元々は違う目的で使われていたところらしい。
南門から見て正面に見える本堂の白壁には木戸があり鉄製の鼎や注連縄などがあるけど、其処は入口じゃない。
左手の白壁の向こうには庫裏と香薬師堂、織田有楽斎のお庭。
歌碑のあるところで右手に見える木製の扉から本堂に入る。
内部は薄暗い土間で、天井を張らずに木組みが見える化粧屋根裏。
左手にはささやかな物販コーナー。
隔てる壁などなしに薬師如来の安置される中央の円台が見え、その縁に並んで外側を向く形で置かれている十二神将と対面する形になる。
まず目に入るのは、左手を天に向かって掲げ、右手を腰に当てているポーズを取った迷企羅大将。(社伝)
部下に何かの指示を出しているのか、それとも悪魔を威嚇しているのか。
そんな事を色々と想像してみるのも楽しいものだ。
その背後に木製の薬師如来の右脇を拝む形になる。]