[だがそれは、尚高みから人を…この国を見下ろす論理と、男には見える。シメオンが王府との交渉を諦めていないことを知らなければ、憤りすら覚えたかもしれない。
実際、この演説の中身が伝われば、貴族ばかりでなく、王府に近い巫女姫を慕う民にも似た感情を抱く者は出るだろう。
千年の祈り、千年の誇り、それは、ただひとつの光によってその色を染め変えるには、あまりに深く濃い深淵を内に抱える]
(いずれにせよ…扱いには更に慎重を要する、か)
[カナンがベルサリスの学徒達の側につくと明確にされた今、彼の持つ知識と力が、全てそちらに与えられていると見るべきだろう。
男が回収して、領地に保管している積荷の中にも、扱い方こそはっきり判明していないが、武器と思しきものが混ざっている事は確認済だ。いずれ、その積荷の引き渡しを王府に要求されるか、反王府軍に強奪を狙われる可能性もある]
面倒だが、仕方ないか。
[下手をすれば、王府と反王府軍、双方を相手にせねばならなくなる。身動きとれぬ事態になる前に、なんらかの手をうつ必要があった]