[彼が蛮族の国とさげすむアースガルド。
そんな国にあっては女だてらに将軍などという地位に就いたりもするというのか……などと感心をしているのか馬鹿にしているのかどちらともつかない思考を巡らせる。
確か、地球は北欧系の民族が移住し、興した国と聞く。
その民族が地球に住んでいたころから伝わる神話は、現在にも伝えられていて、彼の記憶にも残るほどには膾炙した話ではあった。
戦士たちの神話。その世界観では、勇敢に戦い抜いた戦士の元には、戦乙女と呼ばれる女神が天界から遣わされ、英雄と認められた戦士は楽園へと運ばれる……。
蛮族らしい話だ。などと内心で一笑に付しつつ。
そのような女神が信じられる連中の国ならば。
女将軍などがいても違和感はないか……と。
そんな発想しかできぬほうがよほど時代遅れということには考えが及ばない……]
それにですな、副艦長殿……。
これは噂、あくまで噂にすぎませんが……。
どうやらこの星域での争いに、まったく未知の兵器が投入される、などという話が聞こえてきましてな……?
これはこの視察においても重要なファクターになることは間違いない。
いや、噂にすぎないことに振り回される連邦であってはなりませんからな。
だからこそ、私がこれから見聞きすることの重要性は高いということ。
もしよければ、忌憚なきご意見を伺えれば、と……。
[あくまで慇懃に尋ねる彼に、彼女はどう答えただろうか……]