[だからこれも"偶然"。
――――――たまたま、貴方達が近くにいたから。
気づいてしまったから。]
[煽るような言葉の後に続くそれはきっと
二人には届かなかった。
低い唸り声をあげて、彼らに飛びかかったのは
既に人の姿の"タイガ"ではなく、
漆黒の毛皮をまとい、鋭い爪と牙を持った、人ほどの大きさの"オオカミ"だったのだから。
飛びかかり、カークへと向けて放たれた爪には肉を抉るような感覚はあっただろうか。
少なくとも、致命傷には――ベルティルデの命を奪った時の一撃とは違う感覚に、内心で舌打ちを打つ。*]