― 450年前:大森林 ―
[子供目線の価値観を竜が理解出来るはずもないが、殲滅を臥所とはしない灰鋼の竜は子供を追い払う事で自らの寝所の安寧を守った。]
ヴェルザンね…名は覚えておこうか。
[吹き飛ばすのが早かったお陰で、名前を十分に聞き取れなかったが些末な事。
竜は再び目を閉じて、しばしの眠りにつく。
結界の外での遠吠えは聞こえたものの、その力の差を知る竜は大して気に留めもしなかった。
その後200年の間、子供は度々訪れあの手この手と鱗を剥ごうとしてきた為、竜は子供の事をよく記憶に残していた。
懲りない様に呆れもしたが、竜はその子供を殺める事はしなかった。
土産代わりに渡すものは、いつも突風や衝撃などの追い払う力だったが。
やがて来なくなったのは、諦めたのか子供が大人になったからか。
どちらにせよ、竜は安息を手に入れたのだった。
それはほんのひと時の間の事だったが**]