旅人 ニコラス

[――そしてジムゾンへの懺悔を終えたあとは、教会の中でステンドグラスを見上げてじっと立ちすくんでいた。

背後から誰かが近寄ってくる気配を感じると、どこかけだるい雰囲気を全身にまとって振り返る。]

ああ。あなたが人狼だったのですね。

[帽子は被っていない。長い金髪がさらりと揺れる。

陶磁器よりも滑らかな肌には、頬にほんのりと血の色が乗っている。憂いに満ちた翡翠石の目を縁取るのは長くて濃いまつ毛。何も塗ってないはずなのに、桜色に輝く唇からは、この上なく尊大な命令が飛び出した。]

……ほら、とっとと来いよ。

あちこちの村で人狼を葬り去った有名で凄腕の狼占の眼たるニコラス・リーベスヴィッセンこと、エアネスト・アインツェルゲンガー様が、わざわざテメーの登場をお待ち申し上げていたんだぜ？　ありがたいだろ。

[それは七年前、人狼判別機能付き生き人形《うるわしのビスクドール》と呼ばれた頃と同じ態度だった。

今や記憶は完全に戻り、その頃の生意気な態度が全開状態になっている。*]