[ 裏も思惑も絡まない言葉遣いに、酷く安堵した。
同情も差別もない、肌で感じる優しい視線に。
だからこそ、長く乗っていてはいけないと思った。
──癒されてしまいそうで
兄を失った深淵の哀しみを……
──許されてしまいそうで
兄だけを死なせてしまった罪から……
──赦して、しまいそうで
元凶になった海賊を……
分かっていたのか、ナネッテが船を降りると言ったとき、彼らは何も言わなかった。
恩を仇で返すような仕打ちにも関わらず、文句の一つも言う事はなく。
包帯が解けて、降りる段になって。
その少年の顔を見たら、また、泣いてしまいそうになったから。
ぎゅうっと、両手を握って、眉間に皺を寄せる。 ]