>>279>>281 細
[他のものを読んでも忘れる気がするという、その気持ちは分かる気がした。
粗筋を記憶している物語は、商売柄、他にもあるが、はじめて読んだときの胸を掴まれるような感覚まで蘇るような本は、それほど多くない]
あ、うん、でも人によっては『ぼく』の立場とか、かも? だし…
[王子を待っているであろう一輪の薔薇が、はじめて見たときにあまりにも――重なって。
そんな風につい、心の中で言い訳をして]
そうだね、あんな思い切った帰り方をしたんだ。きっと、信じた。
だったら報われなきゃ嘘だ。
読んだり、見てくれた人が、笑ってくれる物語がいい。そういうの……夢、だな。
[微笑みを浮かべる彼の表情は、彼女の目にはどこかぎこちなくも見え。>>281
信じていると語った言葉は優しいものであったし、礼を言ってはくれたけれど、どこか――傷つけてしまったようにも思えて。
思わずふと、手を伸ばしかけ、声がかけられたのはそのときだったろうか>>271。
我に返り、手は手元のコップへと。その所作は、不自然ではなかったはずだ。……あまり]