…………。
[一秒。 …二秒。 ……三秒。
黙り込めば、目を細めた。
生憎と、ゲルトは本に没頭していて男の様子には気付かない様子であったから、好都合なことだなと脇見をしながら思考する。]
――…物好きも程々にしとけよ。
[揶揄うように投げる言葉は、古びた本へ意識を飲まれるゲルトに対するものか、それとも、この本を引っ張り出してきた「誰か」に対するものなのか青年にも判別はつかなかった。
言い終われば、もう用は済んだとばかりに幅の狭いやや急な階段へと足を掛け。]
――…また今年も…世話になる。
[宿へ間借りする旨を伝えれば、それ以上は振り返らずに階上へと踏み出した。]*