― 公国前進拠点・トール執務室 ―殿下の遺命により、引継ぎの準備を行う。すまないが、少しの間俺だけにしてくれ。各士官には半刻後に会議を行うと伝えるように。[拠点帰還後、次に向かったのはトールの執務室である。本来であれば主の命なくして開かれることのない扉を遺命の口実を使って開かせ、一人きりになった。本来であれば現状において半刻の猶予は、いかにも惜しい。それでも我侭を承知で、そう願った。そして少しの間、つい先まで彼が居たかのような空間に佇む]