……ああ、もう!
[その居場所まで手繰りきれず護るに護りきれず、痺れを切らした金貨は、財布から金貨をひとつかみ握り、異形の足元へと投げつけた。硬貨は石材に触れると同時に壁となり、異形を封じ込めようとする。
金貨の一枚二枚の壁では異形の爪に耐えられまいと、最終的には稼いだものではなく金貨自身が生成した金貨を継ぎ足して、対象の無力化に成功した。
傍目には狂気の研究所の屋根に小さな金色の箱がくっついた形である。]
……奥の手です。金の力は偉大なんですよ?
[と、口では落ち着き払っていても、心中は穏やかでいられない。勢い余ってやってしまった。出所不明の金の大量生成、売り払われたらかなりやばい。多大な干渉となってしまう。
――どうか、どうか、金銭価値が洒落にならない程金を使ったこの箱に、誰も気づきませんように。
気休めになるかと祈っては見たものの、きらきら輝く黄金の箱が見つからない未来など想像できずに、大きなため息をつくのだった]