― 少し前・宿 ―
別にさみしくさないよ…
[からかわれるようにディーターに声をかけられ>>278、むすーっとした顔で答える。
早く帰って来てくれとは思ったが、寂しいとはまた違うのだ、と心の中で言い訳する。]
ディーター帰ってたんだね。
[昔こそ、年上を『お兄ちゃん』などと呼んでいた可愛らしい時期もあったのだが。
青年なりに、早く大人にならなければと思った頃から、名前を呼び捨てにするとか敬語を使わないとか、そう言った方向に間違った努力がなされたのだ。
モーリッツは会う度にその事に対して小言を言う。
姉は…お姉ちゃん、から、姉ちゃん、に呼び方が変わった時、ふんっと小さく鼻を鳴らしただけだった。]