― 渓谷にかかる橋 ―[突撃してくる騎馬を留めることはできたが、狼化の術を使ったので、鎧をつけていることができなくなったらしい。篭手《ガントレット》が、肘当て《クーター》が、次々と零れ落ちる。彼らとの愉しい戦いを続けたいのは山々だったが、何やら不思議な力が刻限を告げている。獣化した姿が暴露される前に、トールは空間転移を試みた。またの機会に'しあい'たいものだと、人の声で告げられぬのがもどかしくもある。漆黒の双眸が二人を捉え、闇に還った。トール本体が消えた後、銀の鎧だけが一礼するような姿勢でその場に取り残されてある──**]