[振り向く間さえなく、背中のすぐ側に気配が生まれる。] ───!![背筋を強張らせ、首だけを僅かに巡らせて背後を窺った。視界の端に滴るような紅が揺らぐ。掛けられた言葉に答える声はない。なにも持っていないと示すよう両手を軽く広げ、ゆっくりと前に一歩を踏み出して、距離を離すよう試みた。]