それと──すでに城主から伝言があったなら、お許しを。
[ギィがわざわざ”分身”を象ってジークムントの私室を訪問している理由が、そんなまっとうな伝言を届けるためであるはずがないと承知しつつ、ヴィンセントは事務的に前置きする。]
由緒正しき家柄に属するシュトラウス家の令嬢が当城をご訪問です。
歓迎の正餐に参加されますか?
[おそらくそれは、極めて吸血鬼的な宴になるだろうと言外に含める。
私室で寛いでいた様子だが、ジークムントの服装は乱れたところがない。
ジークムントがアプサラスらに挨拶に行くというならサロンまで同道を、行かないのならそっとしておくことにして、いずれにせよ部屋を辞すべく一歩退いた。**]