― 病室 ―
[ある日、残党討伐に向かっている幼馴染から贈り物が届いた。
見覚えのある小さな陶器の箱と、蜜たっぷりの巣がひとかけら>>272。
ベッドの上で起き上がり、壁に背を預けて、掛け布を掛けた腿の上に乗せて蓋を開ける]
(……あ、これ…)
[中には懐かしいものが入っていた。
幼い頃に描いた落書き、村や村の外で見つけた色の綺麗な石。
確かもっとグロテスクなものも入っていたように記憶しているが、記憶違いだっただろうか。
それが無かったお陰で穏やかに、楽しくそれらを眺めることが出来た]
(そっか、今ティレルに居るのね…)
(…どうなってるのかな)
[報告では魔軍に荒らされたと聞いている。
住んでいた家はとうに空き家になっていたけれど、それ以上に荒れたと思うと心が痛む。
母や、祖父母の墓はどうなっているだろう。
それだけでも無事であることを願わずには居られない]