― 旗艦ヴァンダーファルケ ―
[間に合ったか、と。
音にすることはなく、男は静かに西の海を見つめていた。
やがて来るモルトガット帝国艦隊を静かな気持ちで待ち受ける。
これから生死を賭けた戦闘が始まるというのに、今は波も気持ちも随分と穏やかだ。この戦いに負ければ国はなく、或いはこの命も波間に消える。ひたりと、その冷酷な事実を静かに胸の内に思う。]
──── 信号旗を掲げよ。
[やがて帝国艦隊が水平線の向こうに見えれば、旗艦のマストにするすると信号旗が掲げられた。]
『 我らが興廃この一戦に在り。各員とも奮起せよ。 』
[旗が繰り返し掲げ降ろされ、繰り返す。
帝国へと頭を誇らかに上げるようにして、潮風に旗が翻った。]