[甘えだったのだろう。彼女の優しさに甘えた。彼女《キアラ》と同じ髪の色をしたひと。魔術の道具の口実にかこつけて、声を掛けてくれたひと>>150懐かしい色を宿した彼女に、シェットラントは甘えた] ───失礼します。[初の訪問に、必死に冷静さを装った声の裏の緊張も、きっと彼女には聞かれてしまっていたのだろう。柔らかな空気。懐かしい居心地の良さ、どこか似た声の響き。いつしか彼女の部屋はささやかな安らぎの場となった。甘い香りを求めていたのは、実のところ青年の方だったのかも知れなかった*]