[戦争や死を意識させる本気の言葉は、
記憶の中では、カレルの口から聞くのは初めてのことで。
少し、言葉に詰まった。]
…、戦地――か。
このご時勢じゃあ、な。
[数ヶ月前の皇帝の崩御は記憶に新しく、学校の雰囲気も以前とは変わってしまった。
卒業という門出の日も、昨年までのような、希望に満ちたものとは少し違っていた。
来年、再来年まで両国の国境線に囲まれたこの中立地域が保つという保障は何処にもないとまで囁かれている。
無事に卒業の日を迎えることが出来ただけでも僥倖というものだ。
こころなし、列席者の笑顔が固かったのは。
口に錘でも乗っているかのように、希望めいた未来が語られぬのは。
誰しも、最早この地が平穏とは言えぬことを知っているから。]