[豪奢な扉、絡まる蔦に紛れて、血まみれの男が眠るように座っている。
呼吸を止めたそれは既に吸血鬼ではなく、糧を身に蓄えた人形だ。]
[その前の床に、一人の男が横たわっている。
血で描かれた
目覚めれば、これまでとは比にならない中毒症状に襲われるだろう。
欠けた力を補うために必要な最後の行程へ導くために、狂おしい程の衝動が誘う。]
[甘い血の香りを纏った人形は、器としての役目を終えると同時、灰となり消えて行く。
首元に下げられていた赤い玉だけが残って、他は皆、跡形もなく。
その瞬間、血の呪縛は掻き消える。
それが男の望んだ、自分勝手な恩返しだ。]