……うる、さい……。
[何やら隣の部屋が騒がしい。>>280所詮勇者が最初に訪れる街の最初の宿屋。防音設備などというものが備わっているわけもなく、きっと壁は薄いだろう。ましてや、エルフは耳が良い。
ドスンパタンというやかましい音に不機嫌には唇を尖らせ、そして終いには]
『そりゃ!
……え?ぶふっ……う、うわぁ!?』
[とか言う悲鳴(?)と共に、ドシャーーっと何かをぶちまける音が聞こえた。……そのぶちまけた物の正体に直ぐ思い当れば、エルフはむくりと起き上がる。そして廊下へと出れば]
《マゴ=ケ=ラヒ》
[いつもの鈍くささはどこへ行ったのか、さっさと鍵開けの呪文を唱えると、エルフは隣の部屋の扉を断りもなく勝手に開けた。
その時相手は何をしていただろう。もしベッドの下に散らばっていたそれらを魔法を使ってかき集めようとしていたのなら、頭でもぶつけてしまったかもしれないが、エルフは顔色一つ変えないまま……しかし、少し怒っていたようだ。]
……穀物。粗末にしたら……だめ……。
まだ、生きている……。
日々の糧に感謝して―― 《ケヅータ=カオ》