『十の春を越え、二十の四季を見送る…――。
もし本当に、そのようにゆっくりと変わってゆくのであれば、突然のことに未だ覚悟定まらぬ皆様も、前へ赴く勇気が生まれるかもしれません。
けれど。私には、解放軍と名乗る彼らが其れを望んでいるようには、見えませんでした。
もっと忙しなく、もっと慌てて。
劇薬を飲ませて病を癒し、「ほら治っただろう」と言うような。
そんな嵐のような変化に、感じました。
身体は治るかもしれません。
けれど、其れは極めて危険性の高いもの。
一歩間違えば、命を亡くすかもしれぬ薬です。
クロード・ジェフロイは、此の国を、劇薬でも使わねば治らぬと断じたのでしょう。
けれど劇薬は、身体の弱い人にとっては、持ち応えれぬものかもしれないのです。
国民の皆様に劇薬を飲ますことに、だから私は賛同出来かねました。
薬を飲めば病が治るかもしれなくとも、万が一を懸念して、真に信頼できる薬か見定めるのも、必要な所作だと思ったのです』