[その文書を見つけたのは、ミュスカの森の奥深く。
古くは修道院としての体裁を保っていたかと思われる建造物は既に遺跡と化していて、古びた石には微かにモンテリー王家の紋が読み取れるのみ、緑なす木々の合間にひっそりと蹲ってあるようだった。
そこにシメオンが訪れたのは、ただ気紛れによる偶然だった。
木々の合間に見えた遺跡に、或いは何か目新しい知識はないものかと、さほど期待もせずに立ち寄った。
そこで見出した文書は、古い、蘇生にまつわる試みだった。
元々は、ただ大切な者を死の淵から救わんとする試みであったのだろう。ひょっとすれば著者には、救いたい愛する者があったのやもしれぬ。
どうやら成功せず、日の目を見ることもなかったらしきその研究に、魔は好奇心を動かされた。シメオンが屍術の研究に熱心になりだしたのは、その後のことである。]