[カレルは後方で仲間数名に抱え上げられ、高い位置から戦況を見遣る]
凄いな……まるで一つの獣だ。
[密集隊形進むゼファー軍は、一つの長大な生き物のように見えた。
これをただ一人の指示で動くよう訓練するには如何ほどの時間を要するのだろう。
並外れた軍であることを改めて知らされた]
「感心してる場合じゃねーだろっ、どうする?」
別隊が来るまで何とか凌ぎたいところだけど……。
[下からの突っ込みを受けつつ、視線を一度北と西の方へと向ける。
北は未だ砂煙が舞い、戦闘が続いているのが見て取れた。
あちらはそろそろ交代の時間だろう。
ただ、ここからでは詳しい戦況は見通せない。
西の本陣は今のところ何もなく、その手前辺りで小さな砂煙が見えるだけ。
足の速いゼファー兵でもいたのだろうか、砂煙の位置が大きく移動しないことから、本陣へ向かっているわけではないことだけは知れた]